感染症の日本史(著:磯田道史)

書評

1.本の概要

著者は1970年生まれ。2021年現在は、国際日本文化研究センター教授を務める。前回紹介した『感染症の世界史』の著者である石弘之氏は、磯田氏の義理の伯父にあたる。(ものすごく奇遇な事だと僕は感じます。)

感染症の世界史書評:https://www.yutoringo.com/?p=235

初版の発行は2020年9月。つまり、コロナウイルス(Covid-19)のパンデミックが発生後(発生中)に出された本である。もっとも、本書はコロナウイルスにフォーカスするのではなく、パンデミックの対策に求められる「総合的な知性」を、「歴史学」の観点、特に日本史の文脈での「感染症」の観点から鍛えてくれる内容だ。

2.こんな人におすすめ

  • コロナショックを機に「感染症」に興味が湧いた
  • 日本史が好き
  • ポストコロナの世界、生き方について考えている
  • 先の見えないコロナショックに不安を抱えている
  • 日本史に大きな影響を与えた感染症について知りたい

3.印象に残っている箇所

① 「長崎」が感染症の窓口だった江戸時代

コロナウイルスも東京や大阪といった人の往来が激しく、特に海外との接点も多い都市が感染の中心となっているが、江戸時代も南蛮貿易等で海外との窓口になっていた長崎が感染症の玄関口にもなっていた。

② 明治政府はセックスも禁じた

牛疫という家畜伝染病(ヒトには感染しない)が流行った際、明治政府は太政官布告を出し、感染の疑わしい牛の殺処分を命じた他、港では病気でないことが確認できなければ上陸を許さず、さらに、「暴飲と房事(性行為)を慎め」と宣言した。今の日本の緊急事態宣言よりもずっと踏み込んだ内容だ。

③ 江戸の名君、米沢藩主・上杉鷹山の感染症対策

江戸時代は、疱瘡が大流行し多くの人々が無くなった。岩国藩等は強制的な隔離策を講じて藩主への感染を防いだ。一方で、鷹山は行政機能をストップさせないために、登城を許可し、種々の患者支援を実行した。(藩主優先ではなく、人民優先の対策を敷いたという意味で取り上げられている。)それらの策にも関わらず、多くの命が無くなってしまったが、彼の為政者としての姿勢に各国政府は見倣って欲しい。

4.考えたこと・調べたこと

NHKのHPによると、日本では新型コロナウイルスによる死亡者数は2020年12月31日までで3,494人。なお、2021年4月10日現在では、9,392人と発表されている。そこで、日本での感染症の死因件数では何が多いのか気になって調べてみた。厚生労働省の発表によると、令和元年の統計結果からは以下が分かった。

  • インフルエンザ: 3,571
  • ウイルス性肝炎: 2,655
  • 腸管感染症(赤痢・チフス・O157等): 2,257
  • 結核 2,088
  • HIV: 41 

勿論、死亡率等を考えれば新型コロナウイルスは他の感染症より比較的弱いと言えるかもしれないが、感染力と死者数を見れば、恐れるべき感染症であると自分は感じた。

厚労省:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/h6.pdf

ちなみに同じ統計で、5歳毎の死因統計についても見れるのだが、15歳-19歳、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳の各グループでトップの死因が「自殺」となっていた。ちなみに、40歳-44歳、45歳-49歳のグループでは1位こそ「悪性新生物」(いわゆるガン)であるもおの、2位に「自殺」がランクインしていた。

日本の人口は令和元年時点で現在約1.2億人。同規模の人口を有する国ではどのくらいの自殺者が記録されているのかと思い、メキシコを調べてみたところ、具体的な数字は見つけられなかったが、WHOによって発表されているSuicide Rateなるものがあった。Sucide Rateは人口10万人当たりの自殺者数で、日本は14.3(女8.1:男20.5)だった。メキシコは5.2(女2.3:男8.2)だった。ちなみにアメリカは13.7で大きく変わらず、韓国は20.2で日本よりも高い結果。

基本的に医療レベルやその他死因(感染症等)が多い分、発展途上国が低く出る(先進国ほど引く出やすい)だろうし、統計の取り方が公平かも分からないけれど、国毎に色々と要因を分析してみたいと思った。

WHO:https://www.who.int/teams/mental-health-and-substance-use/suicide-data

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